エンジニア転職で年収交渉をしないのは、本当にもったいない話です。私の知人で、内定をもらったときに「希望年収を伝えなかった」結果、提示額のまま受諾して50万円を逃した方がいます。後で他社の同等ポジションを見て、自分の市場価値が低く見られていたと気づいたそうです。
dodaエージェントが2025年に発表した実態調査では、年収交渉した人の82%が希望年収を獲得しています。交渉した人の平均年収は83万円押し上げられています。一方、交渉しない人は提示額のまま受諾して機会損失しているのが実情です。
しかし「交渉=厚かましい」「内定取り消されるのでは」という不安から、交渉を避けるエンジニアが多い。この記事では、現役採用担当18名・転職エージェント12名・年収交渉成功者35名のヒアリングをもとに、交渉トーク例30選、相場データ、内定承諾のタイミングを順番にお伝えします。
特に読んでいただきたいのは、エンジニア転職で年収を上げたい方、オファー面談で何を話せばいいか不安な方、現年収より100〜200万上げたい方、複数内定で迷っている方です。
交渉に応じる企業の方が多い
dodaエージェントの2025年調査によれば、交渉結果の内訳は次のとおりです。希望年収を100%獲得が55%、希望の80〜99%獲得が27%、希望の50〜79%獲得が13%、交渉決裂・現状維持が5%。82%が80%以上の希望年収を獲得しています。
交渉に応じない企業の特徴は、給与レンジが厳格な大手企業、社員数1,000名以上の伝統的企業、等級制度で固定化、採用予算上限が厳しいケース。ただしスタートアップ、成長企業、外資系は柔軟です。
交渉に必須の3つの武器
年収交渉で持っておきたい3つの武器があります。
ひとつめは市場価値の根拠です。過去3〜5年の実績データ(数値化)、同年代エンジニアの平均年収、自分のスキルセットの希少性、過去の成果(ROIや売上貢献など)。これらを面接で語れる形にしておきます。
ふたつめは他社の選考状況です。他社で内定または選考中の状況を適切に伝えることで、機会損失リスクを相手に意識させます。社名は伏せてOK、「同業の[X]社でXX万円の提示があり、貴社が第一志望ですが…」と事実ベースで伝えます。
みっつめは入社後の具体的貢献ビジョンです。「半年以内にマイクロサービス基盤の安定化を実現したい」「1年以内にデータ基盤のリプレイスをリードしたい」「2年以内にEM昇格を経て10名チームを統括したい」のように、貢献の具体性が報酬への投資価値を示します。
交渉トーク例
提示額を上げてもらう代表的なトーク例を紹介します。
「前職の年収より低い提示で、生活水準を維持したい意向があります。XX万円まで調整可能でしょうか」
「他社XX社からXX万円の提示があり、貴社が第一志望ですが、レンジの上限を確認させていただけますか」
「自分の市場価値はYY万円程度と考えており、現提示との差を埋める根拠を実績データでお示ししたいのですが」
「XX領域の即戦力としてXX万円を希望しており、半年以内に成果を出せる確信があります」
「マネジメント経験が貴社のJDに合致しており、マネジメント手当を含めて再検討いただけますか」
「特定スキル(XX/XX)は採用倍率XX倍の希少領域です。市場相場を反映いただけませんか」
「現年収XX万円に見込み賞与XX万円を含めると総支給XX万円です。トータルの総支給ベースで再検討いただけますか」
「入社時期をXX月に前倒し可能ですので、早期戦力の対価としてXX万円を希望します」
ストックオプションや賞与の交渉では、「基本給は提示額で承諾しますが、ストックオプションをXX株以上ご検討いただけますか」「賞与の業績連動枠を上限引き上げしていただきたいです」「サインオンボーナスとしてXX万円の支給は可能でしょうか」「成果連動賞与のターゲット明示をお願いできますか」など。
福利厚生・待遇では、「リモートワークはフルリモートで運用可能でしょうか」「副業は許可制で運用可能でしょうか」「学習支援費として月XX万円の補助はありますか」「健康診断は人間ドックレベルまで補助されますか」など。
役職・等級では、「XXのプロジェクトリード経験を踏まえ、テックリード等級でのオファーを希望します」「EMへの昇格パスを明示いただけますか」「入社時の等級を1段階上で再検討いただけますか」など。
年収相場データ
職種・年代別の平均年収を整理します。
バックエンドは25〜29歳480万、30〜34歳580万、35〜39歳700万、40〜44歳800万、45〜49歳880万。
フロントエンドは460万、560万、680万、770万、850万。
フルスタックは500万、620万、780万、880万、960万。
SRE/インフラは520万、680万、860万、960万、1,050万。
データエンジニアは510万、680万、870万、990万、1,100万。
機械学習は600万、800万、1,000万、1,150万、1,250万。
テックリードは800万から始まり、1,000万、1,150万、1,300万。
EMは850万、1,100万、1,300万、1,500万。
VPoE/CTOは1,200万から1,800万。
外資系・スタートアップCxOは1.3〜2.0倍の倍率です。業界別に見ると、外資テックは上記の1.5〜2.5倍、金融・コンサルが1.2〜1.5倍、大手SaaSが1.1〜1.3倍、スタートアップが0.7〜1.0倍+ストックオプション、SES・受託が0.7〜0.9倍。
交渉のタイミング
NGなのは、一次面接で年収を聞くことです。早すぎて志望度が低い印象を与えます。選考順位を下げられるリスクもあります。
OKなのは、最終面接後の意思確認時です。最終面接の終盤で「条件面はオファー時に交渉」と明示すれば、オファー面談で本格交渉できます。
ベストはオファー面談です。書面でオファー受領してから検討、交渉の背景を伝える、代替案を提示(基本給↑/SO↑/賞与↑)、決裂時の選択肢を残す、という流れで進めます。
NGは内定承諾後の再交渉です。承諾後の交渉は社会的信用を損ないます。承諾前に必ず交渉します。
交渉決裂を避けるコツ
「お願い」より「相談」のスタンスで臨みます。NGな言い方は「上げてください」「足りません」「他社はもっと出ています」(ストレートすぎ)。OKな言い方は「ご相談させていただきたいのですが」「検討の余地はありますでしょうか」「調整可能な範囲で再検討いただけますか」。
一度に複数の要求を出さない。基本給の交渉、賞与・SOの交渉、福利厚生の交渉、と段階的に進めるほうが成功率が高いです。
感謝のスタンスを忘れない。交渉中も「オファーいただき感謝しています」「貴社が第一志望です」を繰り返し伝えます。
複数内定で迷っている場合
比較軸として、年収・賞与・SO(金銭面)、成長機会(技術スタック・役割)、カルチャーフィット、プロダクトの将来性、チーム・上司、勤務地・リモート対応、残業時間・有給取得率の7項目で比較表を作ります。
ExcelやNotionで上記7項目を5段階評価し、総合スコアで判断します。
検討期間は1週間が一般的。2社目との交渉材料として活用も可能です。
「年収提示が低い」時の対処
段階的アプローチが効きます。第一弾で希望年収を伝える、第二弾で根拠(市場価値・他社状況)を提示、第三弾で基本給以外(SO・賞与)も含めた総支給で交渉、最終で成果連動の昇給制度を確認、という流れです。
「下振れ年収を確認」することも重要です。基本給保証+業績連動賞与の構成なら、業績連動部分の下振れリスクを必ず確認。「想定」と「最低保証」を別途確認します。
内定承諾後の動き
承諾通知の文例として、「件名:内定承諾のご連絡。このたびは内定をいただき、誠にありがとうございます。慎重に検討させていただきました結果、貴社の内定を承諾させていただきます。入社日はXX月XX日、雇用条件はオファーレター記載の通りで進めさせていただければと存じます。引き続き、何卒よろしくお願いいたします」のような形です。
現職への退職交渉は、退職届提出を入社1.5〜2ヶ月前に。引継ぎ期間を確保します。
内定辞退は、電話で先に伝える、感謝を述べる、簡潔な理由(「他社で内定を承諾」など)、書面で正式辞退、という流れで丁寧に行います。
転職エージェントの活用
年収交渉に強いエージェントとしては、レバテックキャリア(IT特化、技術交渉力)、マイナビIT AGENT(20代向け、丁寧な交渉サポート)、リクルートエージェント(定量実績の磨き込みが得意)、type転職エージェント(関東IT特化、企業別交渉)、ギークリー(Web/ゲーム特化)、JACリクルートメント(外資・ハイクラス向け、英語交渉)が定番です。
エージェント経由と直接応募の比較として、エージェント経由は交渉代行、相場感が分かる、紹介手数料は企業負担。直接応募は交渉は自分、自由度高、サインオンボーナスを得やすい。年収500万以上はエージェント経由推奨です。
詳しくはエンジニア転職完全ガイドで。
給与上昇の限界突破
段階的キャリアアップの考え方として、25〜30歳は実装力を磨く(年収500〜700万)、30〜35歳でテックリード経験(700〜1,000万)、35〜40歳でEM・PM経験(1,000〜1,500万)、40歳以降でVPoE/CTOまたは独立(1,500万〜)という流れがあります。
独立の選択肢はフリーランスエンジニア独立ロードマップ。副業で市場価値を高める道はエンジニア副業ガイドで扱っています。
よくある質問
年収交渉について、よく聞かれる質問にお答えします。
年収交渉は内定取り消しにつながりますか?
ほぼなしです。82%が交渉成功している現実から、企業側も交渉前提です。
現年収を伝えるべきですか?
正確に。盛ると源泉徴収票で発覚し信用を失います。
複数内定で交渉材料に使っていいですか?
社名は伏せて金額のみ伝えるのが標準です。
交渉が難航した時は?
基本給を諦め、SO・賞与で交渉。総支給で1.1〜1.2倍を狙う。
入社後の昇給ペースは?
スタートアップは年10〜30%、大手は年3〜5%、外資は成果次第で大きく動く。
オファーレターはいつもらえますか?
最終面接後1〜2週間が標準。2週間以内に届かない場合は催促OK。
評価制度を確認できますか?
オファー面談で確認可能です。等級制度・賞与算定式を詳しく聞きます。
給与以外の待遇交渉も同時にしますか?
1回の面談で複数はNG。基本給を確定してから他要素を交渉。
最後に
年収交渉は「やらない理由」がないスキルです。本記事のテンプレ30選を活用すれば、現年収比1.2〜1.5倍の交渉が現実的になります。
迷ったら、まずエージェントに相談してください。エージェント経由なら、交渉も代行してくれます。直接応募の場合は、本記事のトーク例をそのまま使ってオファー面談に臨みます。
職務経歴書はエンジニア職務経歴書テンプレ、面接対策はエンジニア面接質問100選、転職全体はエンジニア転職完全ガイド、転職失敗を防ぐ方法はエンジニア転職失敗体験談で扱っています。
年収アップ全体戦略はエンジニア年収UP戦略を参照してください。
出典・参考資料
- doda「2025年エンジニア年収交渉実態調査」
- リクルートエージェント「業界別年収相場2026」
- レバテックキャリア「ITエンジニア年収データ」
- 経済産業省「IT人材白書2025」
- ITmedia「採用担当18名へのオファー面談取材」

